入内雀(にゅうないすずめ)
藤原実方奥州に左遷さらる。
その一念雀と化して大内に入り
台盤所の飯を啄しとかや。
是を入内雀と云
平安時代、一条天皇の時代の長徳元年(995)、
中古三十六歌仙の一人で歌人として有名な藤原実方が、
書の三蹟の一人でもある藤原行成と宮中で口論となった。
口論の原因は、行成に陰口をたたかれたことに怒っていたという。
この時、実方は怒って杓で行成の冠を叩き落し投げ捨てるという
無礼な振舞いをした。
これに対し、行成は抗わず役人に冠を拾わせて事を収めた。
しかし、この暴力行為が原因で藤原実方は奥州へ左遷された。
左遷されてしまった実方は、
怨みと都への思いを募らせながら陸奥で没した。
実方の死語、京都の内裏の清涼殿へ1羽の雀が入り込み、
台盤(食事を盛る台)の飯をついばんであっという間に平らげた。
人々はこれを、京に帰りたい一心の実方の怨念が雀と化した、
もしくは実方の霊が雀に憑いたといって、
内裏に侵入する雀であることから「入内雀」、
または「実方雀」と呼んだ。
左京区静市市原町にある更雀寺(きょうしゃくじ)は、
通称「雀寺(すずめでら)」と言い、境内に雀塚がある。
この雀塚は、雀と化した実方を塚を築いて弔ったものと言われている。
※動物学的には、にゅうないすずめとすずめは別もの
ニュウナイスズメ(入内雀・学名Passer rutilans)は、
スズメ科の鳥類。
民家近くに生息するスズメとは対照的に、林や森などを好む。
全長約14cm。
雄はスズメに似ているが頬に黒点がなく、
頭部と背面はスズメよりもあざやかな栗色をしている。
雌は薄茶色で、太い黄土色の眉斑が目立つ。
夏期は北海道・東北地方におり、冬季は関東以南に渡る。