長壁(おさかべ)

長壁は古城にすむ妖怪なり。
姫路におさかべ赤手拭とは童もよくしる所なり


兵庫県にある姫路城の天守閣に住んでいるという妖怪。
老婆または十二単を着た姫の姿をしていて、
その正体は一般に狐だといわれているが、蛇体との説もある。

松浦静山の『甲子夜話』によれば、
長壁姫は一年に一回だけ城主と対面する老婆のような姿の者で、
城では八天堂と呼ばれているとある。

小姓の森田図書という者が肝試しで天守閣に駆け登った。
そこで長壁姫と出会い、
「何をしに来た」
と訊ねられて
「肝試しです」
と答えると、その度胸と率直さに感心した長壁姫は
肝試しの証拠品としてしころ(兜につけて首元を守る防具)をくれたという。

剣豪の宮本武蔵も長壁姫と出会い、彼女に取りついていた妖狐を追い払い、
彼の豪胆さに感銘を受けた長壁姫が宝剣を授けたともいう。

ちなみに、福島県にあった猪苗代城にいたという亀姫は
長壁姫の妹だといわれている。


※ おさかべ
長壁・刑部・小刑部・箴部・越坂部など
いろいろな字が当てられているが、
おさかべについては、一考を要する。
私見としては、蛇神との関連が強いと考える。