山精(さんせい)
もろこし安国県に山鬼あり。
人の如くにして一足なり。
伐木人の持てる塩をぬすみ
石蟹を炙りくらふと永嘉記に見えたり
『永嘉記』『玄中記』『抱朴子』などの中国の文献に登場する妖怪。
「山鬼(さんき)」ともいう。
身長は1尺(永嘉記)
または3〜4尺(玄中記)、
1本脚は常人とは逆向きについており、カニやカエルを食べるとある。
日本では、山の神として「山精様」が群馬県に伝わっている。
山精様の信仰の由来として、以下のような昔話がある。
ある木こりが、家の裏山の一本松を大事にしていたが、
その松が落雷で燃えてしまった。
木こりは焼け残った幹を十二様(群馬県北部の山の神)の
分霊として祀り、松の霊を慰めた。
ある雪の日、木こりが裏山の炭焼き小屋を見に行こうとすると、
あの松の幹に目と口が浮かび上がり
「炭焼き小屋に行くな、家へ帰れ」
と言った。
木こりが驚いてよく見ると、目と口は消えていた。
雪が激しくなったので木こりが家に帰ると、
小屋のほうで大きな雪崩が起きた。
命拾いをした木こりは松が自分を守ってくれたと思い、
目と口のある松を象って人形を作り、山精様として祀った。
話を聞いた周囲の人々も同様の人形を祀り、
それ以来、山で遭難する人はいなくなったという。
群馬県沼田で、この山精様の民芸品を復刻販売していたが
現在では販売されていないようだ。