玉藻前(たまものまえ)
瑯邪代酔に古今事物考を引て云
商の妲巳は狐の精なりと云々。
その精本朝にわたりて玉藻前となり
帝王のおそばをけがせしとなん。
すべて淫声美色の人を惑す事
狐狸よりもはなはだし
尾が九本ある狐。
中国の殷では妲己に、南天竺では華陽夫人に、
周ではHOUJI(褒じ)に化けて国を滅ぼした九尾の狐。
この狐は、735年に若藻という娘に化けて遣唐使の船に乗り来日。
その数百年後、赤子に化けて坂部行友という武士に拾われ、
藻と名付けられて育てられた。
藻はやがて玉藻前と名乗り鳥羽天皇の妻になったが、
天皇は次第に体調を崩した。
そこで天皇の家来たちは陰陽師・安部泰成にその原因を占ってもらうと、
玉藻前の正体は狐で、天皇の病気はその狐の力によるものであることが分かった。
家来たちが玉藻前を捕まえようとすると、玉藻前は狐の姿になり、
栃木県の那須原へ逃げた。
九尾の狐は那須原に住みつき、田畑を荒らすようになった。
そこで天皇は上総介広常と三浦義純という武士に
九尾の狐を退治するように命じた。
2人は武士を大勢集めて那須原へ向かい、
激戦のすえ、ついに九尾の狐を退治する。
ところが、退治された九尾の狐は殺生石という岩になり、
毒気を出すようになり、今に至っている。