鬼(おに)

世に丑寅(うしとら)の方角を鬼門といふ。
今鬼の形を画(えが)くには頭(かしら)に牛角(うしのつの)をいたゞき
腰に虎皮(とらのかわ)をまとふ。
是(これ)丑と寅との二つを合わせて、
この形をなせりといへり。


鬼は、「穏」が訛ったものとの説がある。
鬼とは、隠れているもの、姿を表さないものなのである。

かつては、「鬼」と書いて「もの」と読ませていたようだ。

不思議なもの、怖ろしいもの、人知では理解できないもの
こういったものをひっくるめて、「鬼」と呼んでいたのだろう。
妖怪の総大将といったところかとも思うが、
鬼を妖怪といった括りで片付けてしまっていいものだろうか
という思いもある。

「鬼」と書いて「かみ」と読ませることもある。
聖徳太子の母を「かみくま」とも「おにくま」とも言っていたとの伝承もある。
こうしてみると、神との区別も曖昧になり、
ますます鬼は分からなくなる。
虫愛づる姫君の言うように、
鬼と女は目に見えぬが良いのだろう。


丑寅=牛の角と虎のパンツ=鬼
という結びつきは、石燕の洒落である。


※「お」は尊敬を表す接頭語。
 「に」は尊敬畏怖を表す古代朝鮮語(兄の「に」と同じ)
 ・・・という説もある。